世界中の歴史的な様々な場面で登場するラピスラズリ。例えば日本では、瑠璃と呼ばれ、仏教の七宝(金・銀・瑠璃・玻璃・しゃこ(貝)・珊瑚・瑪瑙)のひ
とつとされ、真言宗の開祖、空海(西暦774-835年)は瑠璃を守護石としていました。
エジプトでは「天空と冥界の神オリシスの石」とされ、普遍的な真理を象徴する最高の力を秘めた護符として、ミイラや墳墓副葬品として用いられていました。
中でもツタンカーメンの墓からは、棺や副葬品に使われた、おびただしい数のラピスラズリが発見されています。有名な黄金のマスクも、目のまわりの青い部分はラピスラズリでできています。一説によると、これは口や耳などの穴から悪魔などが進入するのを防ぐための習慣で、紀元前1200年代頃のエジプトでは、人々が目や唇に化粧を施している絵画も見つかっています。いわゆる「お化粧」のルーツはこの魔除けの儀式であったという説です。


◆黄金のマスクはラピスラズリで化粧されています
新約聖書のヨハネ黙示録には、世界が終末を迎えた後に現れるとされる、新エルサレムの都の神殿にある東西南北12の礎は、それぞれ12種類の宝石で飾られていて、そのうちの2番目がラピスラズリであると記されています。
この12種類の宝石は現在の誕生石の元となっています。(参照
誕生石と星座石)

◆聖地エルサレム
ジパング(日本)を目指したマルコ・ポーロ(西暦1254-1324年)はその著書「東方見聞録」の中でラピスラズリを求め、その産出 地であったヒンドゥークシュ山脈北部、バダフシャン地方のラピスラズリ鉱山を訪ねたことを記しています。
かつてラピラズリから抽出したこの顔料は、他のものでは同じ色を出すことができず、金と等価で取引されるほど高価なものでした。
険しいラピスラズリの産地
マルコポーロの東方見聞録で紹介されたアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈
からパミール山脈一帯は5千年前と同じように、最も良い原石が採掘されています。しかしながら、険しい山岳地帯での採掘のために産出と輸送量には限界があり、流通量には限界があります。もちろん他にも産地はあり、チリなどをはじめ豊富に採掘されていますが、建材に使われるようなランクの石が多く、やはりラピスラズリというとアフガニスタンというイメージが定着しているようです。

◆ヒンドゥークシュは商業が活発なアフガニスタンの首都カブールの北側に広がる。
主な産地・・・アフガニスタン、ミャンマー、チリ、アメリカ(ロッキー山脈)、ロシア(バイカル湖近辺)、アンゴラなど
ラピスラズリの類似石-人気者の運命
古代より現代まで愛され続けているラピスラズリ。様々の宝石がブームとともに現れては消えてゆく中、これほど長い歴史のなか常に愛され続けている宝石は稀でしょう。さて、人気者に必ず付きまとうのが偽物・・・。その姿は様々で、人造石から模造石、合成石まで、なかには真っ赤な偽物もありソーダライトなどの類似石をラピスラズリと冠している酷いところもあるくらいです。
簡単な見分け方によくパイライトの有無を見るよう説明される方が多いのですが、ご丁寧にパイライトまで模造されていることもあるのでそれだけでは心細いですよね。
ラピスラズリは、濃い藍色に無数のパイライトが散りばめられ縞目の少ないものほど高価になります。そのため、色の薄い、あるいはムラのあるラピスラズリに、染料で着色してあるものもあり色味まで天然にこだわるのであれば気をつけなければなりません。

他にも、ラピスラズリの粉や、その成分となる鉱物の粉を、圧縮して固めてあるものや、成分となる鉱物の粉を、樹脂で固めてあるものなどもあり、成分分析までしなけらば見破りにくい物まで出てきています。とはいえ、コスト面からしても出回っている贋作のほどんどはハウライトを青く着色したり、練り物のプラスチックだったりするので、よくみることによって真贋することができます。
ラピスラズリに、白い縞目(方解石の鉱脈)が観察できたら、それは本物の可能性が高いでしょう。鉱物の粉を固めた場合、そのような縞目を入れるのは難しく、また染めた場合、縞目まで染まってしまう事になりますが、基本的にラピスラズリは方解石が多いと値段が下がってしまうのでわざわざコストを掛けてまで縞目を残すとは考えられません。
ここ数年流行続けている丸玉のパワーストーン・ブレスレットなどによくあることなのですが、中のゴムが青く色づいているのを見て偽物ではないのかと質問しているバイヤーさんをみかけることがあります。しかしながら、ラピスラズリは本物や偽物に関わらず磨耗や汗により色落ちや色移りするので、判断材料にはなりません。結局、多くのラピスラズリを実際に目で見たり、手を触れて感触や重みなどを覚えるしかなく、本で知識を得たところで真贋判定は厳しいところです。確実な方法としてはやはり鑑別機関をたよるしかないでしょう。天然石の真贋とはこれだけ難しいことなのです。単なるアクセサリーとしてではなく、天然にこだわりパワーをもとめるような方は、デパートの一角にある宝石や天然石専門でないアクセサリーショップや、時計などの雑貨を扱うショップになぜか置かれている天然石アイテムには手を出されないほうがよいでしょう。
最後に、ラピスラズリを扱うときの注意点なのですが、非常にデリケートな石なので強い衝撃は避けるようにしなければなりません。また、薬品にも弱く塩酸と反応して硫化水素を出し、ゼラチン化してしまうので洗浄の際には注意が必要です。